オーブントースターの音か食パンの焼けた匂いか、あるいは両方に反応して男が寝床から半身を起こす。寝起きで目をしょぼしょぼとさせる横顔は幼い。この時間帯でしか見れない無防備な姿が好きで、つい目で追ってしまう。
「うわ、しまった」
ぼんやりしていたのは俺もだ。飲もうとした牛乳が胸元に溢れ、着ていたシャツに染み込んでいく。その瞬間、ひゅっと息を吸い込む音が聞こえ反射的に身を固くした。
「春日さんから母乳が！！！？」
「…おはよう、俺のハン・ジュンギ」
見開いた目がスッと切れ長になり、その名を宿すように彼の表情が変わる。
「おはようございます。今日もいい朝ですね」
ハン・ジュンギは何事もなかったかのように起き上がり、朝の挨拶を俺に返しながら「私の春日さん」と付け足した。