子どもの頃は、自分の周りにいる高齢の方々による「昔は満州に住んでいてね、」という昔話がどういった意味を持つのか分からなかった。
その後歴史を学び侵略戦争を知ったけれど、「満州へ行くか死ぬかしかなかった、行ったあとは殺すか死ぬかしかなかった」という彼らの言葉へどう返すべきかは、正直今もまだ分からない。あの時日本が行ったことは絶対に侵略に違いなく、彼らは無謬でも無辜でも無罪でもない。けれど、まともな武器も持たない彼らの家と畑は、関東軍の基地よりも前にあった。
免罪や正当化や改竄や矮小化を目的としない、繊細な語りができる場があればよい、と思う。とても難しい。