《名の変更許可申立てをしましたご報告》

実は9月の中頃、家庭裁判所に名の変更申立てをし、許可の審判が下り、戸籍上の名の変更をしました。その体験談みたいなものを纏めておきます。
いざ申請や手続きをしてみると、理不尽なあれこれ、そもそもスタート地点に付くまでの困難さに強くモヤモヤ。何で他者の「許可」が要るねん…。出生時に与えられる戸籍上の名前って自分でつけられるものじゃないので、大人になった誰もに一度は改名する権利があって良いよな…などと考えていました。
さてこの辺は語ると長くなるので、今回の本題である自分の体験談の方へ。簡単にですが残しておこうと思います。本当はもう少し検索に引っ掛かりやすい形で残したかったのですが、ブログの類いなどはやっていないためこちらで。
私は運良くかなり上手くいったタイプなので参考になるかどうかは分かりません。まあノンバイナリーの体験談はバイナリートランスのものと比べて少ないので多いに越したことはないかな…と。

自分が参考にさせていただいた記事も貼っておきます。↓
lgbter.jp/noise/0138/

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申立てにあたり必要なものは上にリンクを貼った記事を始め、色んなところに載っていますがここでも改めて。今回は、トランスやノンバイナリーの改名に絞ってお話しします。

・申立書(書式や記入例は裁判所ホームページにあります。)
・戸籍謄本
・収入印紙800円分
・郵便切手(裁判所によって金額は違います。自分は1500円以上提出しましたが結局使ったのは84円切手一枚でした。残りどうしよう…。)
・名の変更の理由を証する資料(性同一性障害の診断書や通称名の使用実績を証明できるものなど)

申立書の書き方ですが、自分は病院の方で「性同一性障害」の診断が出ているため、上の記事や他の方のブログなどの内容に倣い、申立ての理由には8番の「その他」で「性同一性障害のため」と書きました。
「名の変更を必要とする具体的な事情」また「備考」は次のスレッドのように書きました。(個人情報にあたる部分は隠しています。)

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・名の変更を必要とする具体的な事情
申立人は、幼い時期から性別違和を感じており、それから来る精神的負担から、█歳頃より精神科の受診を始め、その後「うつ病」の診断を受けました。█歳の頃に 「性同一性障害」の診断を受け(中略。受けた治療の詳細)
現在の戸籍名は特別「█性らしい」とされるものではありませんが、これを見聞きしたり書いたりすることは、自身が「█性」として生きた頃を強く意識させられるため、多大な精神的苦痛を感じます。そのため大学進学前に、長く通称名として使用している「██」の名に変更することを希望します。
上記の理由により、名の変更を申立て致します。

・備考
申立人のジェンダーアイデンティティは「ノンバイナリー」です。「性同一性障害」の診断を出した担当医にはそれを理解いただいています。

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今回、自分は「ノンバイナリー」であることをカミングアウトして申請することにしました。
診断書がありバイナリートランスと同じ手順で治療を受けていましたから、申立書だけならバイナリートランスとして通せそうではあり、裁判官にとって「混乱」が少ないのはそちらだったと思います。が、面談となった時、自分がバイナリートランスに「成り済まして」受け答えするのは無理だと(絶対うっかり口を滑らせるか不審なリアクションをする)、自分の苦痛を減らすために申立てをするのに、「男性/女性として生きたい」と裁判官に言う苦痛を被るくらいなら(想像するだけでもう自分には耐えられませんでした)、話をややこしくしてでも「ノンバイナリー」として申請しようと判断しました。
ただ、上記の備考だけでは言葉足らずだろうと思い、次の次のスレッドのように「お手紙」を付け足しました。

本当はノンバイナリーだと言うくらいでややこしくなる心配をしなくて良い世の中であって欲しいんですが。

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そして問題の「名の変更の理由を証する資料」の話です。
自分の場合は、「性同一性障害」の診断書と、通称名の使用実績となるもののコピー、そして裁判官に向けて前述の「お手紙」みたいなものを提出しました。

実績は最も古いもので4年程前のもの、これが一番目立つようにして資料にも「4年程前」としっかり書き加えておきました。通信制の高校に通っていた頃、無理を言って作ってもらった通称名の生徒証のコピーです。その時から改名を目指していたので実績作りに欲しくて担当教師に当時の僅かな気力を振り絞ってゴネまくり、一年くらいかけて発行してもらいました。
その他は友だちや知り合いに頼んで送ってもらった年賀状や手紙、通販の履歴や届いた荷物の宛名、DMが主な実績メンバーです。健康保険証に通称名を記載するやり方はよく聞きますが、自分の加入しているところは対応しておらず。
とにかく些細なものでも通称名が記載されていれば全て保管し、ありったけ提出しました。どれが有効なものだったかは教えてもらえなかったので何とも分かりません。日付のわからないものも有効だったのか…。

自分の場合はほどほどに長期間通称名を使っていたこと、申請までにまあまあな治療を受けていたことがあり、比較的許可されやすいケースだったと思います。

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そして前述の「お手紙」について。申立書ではとても詳しい事情を書ききれない、その場で考えて話すのは苦手だから面談で言いたいことを言えるとは思えない、「ノンバイナリーって何?男性/女性になりたいわけじゃないの?」とか言われたらキレてしまう、ならば先に言いたいこと全部書いてしまおう!と思って用意した、「具体的な事情」を深掘りした内容の文書です。ざっくりした経歴や自らのアイデンティティーについて、今の詳しい生活実態、先に載せた記事のリンクも参考にさせていただき、面談で質問されそうなことの答えも書いてしまいました。外出先でのトイレとかトイレとかトイレとかの使い方も。
そして申立てするにあたって、「今の戸籍名ではこんなに不都合がある!改名するとこんなに良いことがある!誰も困らない!」と伝えるのが大切なわけですから、今の戸籍名と通称名が異なる状況でどれだけ自分が困っているか、周囲がどう思っているか馴染んでいるか(不満ですが、家族にどう思われているかも重要みたいなのでそこも。)、というのを熱弁しました。
内容としては申立書に書いたものを詳しくねちっこくした感じです。

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以上を持って、いざ裁判所へ出向いたわけとなります。郵送でも構わないのですが、書類に不備があってもその場で何とかできるよう、そして「お手紙」を以てしても伝わらない部分があればその場で補足できるようにと思い。結局、提出した書類は何事も無く受け取られ、数分で裁判所を出ることになりました。

後は早くて一週間くらいすれば、出廷を求めるお便りが来るかな…と思って待っていたら、何と数日後に余った切手と共に審判書の謄本が。結果は「許可」。謄本を見てみると許可の審判が出たのは申立書を提出したその日。朝イチで提出に行ったお陰か…というのはどうでも良いが、思いっきり面談するつもりだったので拍子抜けでした。「お手紙」が功を奏したのか、実績と治療をガチガチに固めていった影響か、詳しいことは何も分かりませんが、とにかく良かった。

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その後は役所に行って手続き、警察署で運転免許証を更新、そして銀行口座の名義や保険証の手続きなどなど…。仕事先にはなるべく早く伝えた方が良いと聞いたので、許可が出てすぐ連絡し、給料が振り込まれる銀行口座の名義を変更して改めて伝えました。今は大半の手続きが終わり、少し落ち着いてきたところです。

そんなわけで、自分の「名の変更申立て」について纏めてみました。申立ては「これをすれば通る」「これが無いと通らない」という確たる基準らしきものが無く、裁判官によるところが大きいのが実情のようです。
自分の通っていた病院では、「『性同一性障害』でいくならホルモン治療か、何かしら不可逆の治療をしていないと裁判官によっては却下される可能性がある」という話も聞きましたが、これも証拠があるわけではなく(ただ、治療を何もしていない且つ、する予定も全く提示していない方の成功例はまだ観測できていません)。
自分の一件で感じたのは、申立てはいかにマジョリティにとって「分かりやすく」「納得」できる理由を提出できるか?「無害」とジャッジされる存在になれるか?という今まで培った「処世術」の集大成だったな…というところです。

まぁ構造に物申したいことはごまんとありますが、これで以上です。いつか何方かのお力になれれば幸いです。

(8/8)完

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