試写会で『イニシェリン島の精霊』を見てきた。
(しばらくアイルランドに行けていないので、最初のコリン・ファレルのアイルランド英語を聞いただけで望郷の思いが溢れ出たのだが、それを言い始めるとキリがないのでそれはそれとして。)
まずなによりも、もはや演劇だった。しかも『西の国の伊達男』から『ゴドーを待ちながら』にいたるアイルランド演劇の系譜を忠実になぞっており、教科書的ですらあった。この映画の舞台となる時代がアイルランド内戦期だということはいかようにも解釈できるのだが、私は砲弾の爆破音が聞こえてくるほど本土と近い距離にありながら内戦自体はまったく他人事、というイニシェリン島の閉塞感こそがこの映画の重要な背景であるように思った(この閉塞感は、最近の作品で言えば『恋人はアンバー』でも描かれるアイルランドの十八番である)。登場人物も少ない不条理演劇なので、これがゴールデングローブ賞を取るというのには驚く限りだが、アイルランドを専門にしている身としては同時にうれしいことでもある。
以上が「批評」だが、個人的な「感想」としては終始漂う不穏な空気に緊張を強いられ続け、拒絶されてもなおコルムに付きまとうポーリグにイライラし、愉快な鑑賞体験とはとても言えなかった(胎児も私の不愉快さを察知したのか、後半は延々暴れていた)。

思い立って、1人で東京外国語大学の学園祭に行ってみた。私自身は学生時代は学園祭では自分のサークルでピアノばかり弾いていたし、勤務校の学園祭にもいまだ行ったことがない。外語大は単発で非常勤をやっているだけだし学生から呼ばれたというわけでもないので、今回は完全に物見遊山であった。
学園祭というのは基本的に内輪ウケイベントだと認識していたが、外語祭はちゃんとアウトリーチの場になっており、これは評判がよいわけだと納得した。今回の主な目当ては各国語科の1年生が出す料理店で、私はアフリカ語科のブッサ、ポルトガル語科のパステウ、中央アジア語科のディムラマ、英語科の揚げオレオを食べ歩いたが、たびたびオペレーションが機能不全に陥り商品が提供不能になっているのも微笑ましかった。
せっかくだから何か見て帰ろうと思ったが、各国舞踊を披露するダンスフェスティバルは満席であり、ピアノやバレエのサークルの発表とも時間が合わず、展示されているものだけ見て終わりにした。看板を見ると絵本サークルなるものもあるそうで、外国の絵本の読み聞かせなどもやっているらしい。子連れも多かったし、出産したらぜひ連れてきたい。

それにしても500字というのは長すぎず短すぎず、絶妙な分量であるように思う。ブログを書くとそれで満足してしまい、論文を書こうという気にならないのは研究者として致命的だと思ってブログを辞めたことがある人間なので、(少なくとも私にとっては)「ちょっと物足りない」くらいの分量がちょうどよい。また、執筆時間をそんなに割かなくて済むのもよい。たとえば今のように、アイルランド時間13時開始の読書会が21時から始まると思い込んでスタンバイしていたが一向に始まらず、iPhoneの世界時計を確認したら現在アイルランドは12時であり、そうかサマータイムが終わったのかと途方に暮れているときなんかにはぴったりである。
というわけでマストドン、どうぞよろしく。ちなみに今日うれしかったのは、先日NEXTで注文したクリスマスジャンパーが届き、しかもそれが生地といい柄といいサイズといい100点満点だったことである。クリスマスジャンパーなどというものは適度にダサくないと存在意義がないが、ダサすぎると着用にあたって無用な勇気を必要とする。つまりこれくらいが最適なバランスなのだ。さて、いつデビューさせようかしら。

Fedibird

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