『テノール! 人生はハーモニー』観た
下町育ちのラッパーが偶然オペラに出会い、才能を見いだされ、オペラに惹かれ、歌手の道を駆け上がる。畑違い、社会階層の違いを乗り越える王道展開で安心の楽しさ。
この手の作品って主人公が挫折を乗り越える時に、階層の差を越えた共感とか、家族やメンターの助力など「孤独ではない」ことが取り上げられるのが多いかと思うけれど、この作品は自分の居場所がないと思う主人公に「自分で立て、その場所が居場所だ」と強気回答をするのがちょっと独特で面白かった。「自分の好きを信じて進むこと」に焦点がある作品なんだよね。下町の文化・生き方よりいわゆるハイソな文化に惹かれる、アイデンティティの葛藤。そのドラマが、悪く言えば浅い、良く言えば湿っぽくなく描かれた感じ。
でも、階層差を感じる描写が色々あり面白かった。嫌な男がいい奴で、優しい彼女が自己中パリピな意外性も楽しい。
オペラの歌唱に触れて感動する様子、先生が彼の表情を確かめる様子がしっかり表現されるのがとても良かった。先生の踏み込みすぎない距離感も心地よい。フランスっぽいなー。
お決まりの主人公の隠れた才能が発見される場面、あれが特に鮮やかでねー。観ていてしっかり「おお!」と感じる。冴えた出来だと思った。面白かった。