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『鞠子はすてきな役立たず』山崎ナオコーラ 読了

働き稼いで自立してこそ大人と教え込まれた小太郎と、必要であれば働くが趣味に生きて自己満足を大事にしたい鞠子が結婚し、生活の変化とともに小太郎の意識も…と、仕事と趣味とお金、自己満足と社会参加を考える話で面白かった。
鞠子により披露される趣味事に対する考え方が素敵。
鞠子も小太郎も結構極端な考えを持っている(小説の人物だからね)けれど、なんとも穏やかのんびり夫婦なのが心地よい。
鞠子の、趣味は好きで楽しいもの、実益を意識するのは邪道という考えは良いな。形から入って好きになるのも素敵だ。共感だ。どんどん趣味を広げていく意欲に、読んでいて笑みが浮かぶ。自己満足は良い言葉だ。その役立たない趣味でも「きっかけ」になることに辿り着くのが良かった。とてもわかる。
仕事と趣味、自立と他立の対立のなかでないがしろにされているものに目を向ける。のはわかるが、それでも小太郎が感じるように、働き稼がない事の罪悪感も理解するし、現実的にはお金と時間の余裕・不安がない事の影響が大きすぎて…という気持ちが湧いてくる。仕事まわりの話の展開も、そんなにうまくいくか?と気にはなる。
それらの引っかかりを越えて、自己満足を大切にする意識には圧倒的に同意したい作品だった。

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