じいちゃんは本当に立派な人だっったのだなと、孫への触れあい方と父の語りから、時差でわかるのが良い。この後半の父親、苦しい立場で、じわりと弱さが出てきてしまう具合がいいんだよね…。高潔に生きるは難しい、でもだからこそ心がけなければならないんだよね。監督の心にも刻まれているのだろうな。
アンソニー・ホプキンスの、元気で愛嬌のある時と元気がない時の演技の差もすごかった。生々しさ。
ユダヤ系差別と黒人差別が重層的に語られているのが興味深かった。経済的格差も。私には知れない当事者の状況と感覚が垣間見える。黒人ジョニーの先の暗さ、耐えて浮かび上がって欲しいと願ってしまう。
エリート主義に向かう一因もあるのだろうと推測できる。トランプ姉(チャス姉!)のスピーチ「全て努力で掴んできた」も、客観的には妥当でないという監督の認識も見られる。
全体としては、少年なりの進もうとするけれど、しかし圧倒的に力も分別もなくてどうしようもなく社会の中にいる感じ、社会の中に組み込まれていく感じ、その苦い哀しさが撮り方などにも表れていると感じられて、いい作品だった。
個人的にジェームズ・グレイ監督の作品って、父親と子、父親と家族をみつめる印象だけど、この作品も祖父と孫…と見えつつ、やはりかなり父親の映画でもあるよなぁと思った。子供として、祖父と父親を見てきて今思うこと、みたいな。素直な肯定ではなく、でもまぎれもなく愛がある的な感覚がいいよね。
ロストシティZの次に好きだな。
監督らしい演出みたいなのは数あるのだと思うけど、詳しく覚えてない中で印象にあるのが鏡使いで、この作品でも鏡の演出があって、あーこれこれーとなれて少し嬉しかった。知ってるものがあると喜んでしまう。