この土日はパット・バーガー『女たちの沈黙』読んで過ごした。
『イリアス』を敗戦国の女性の視点から語りなおした物語で、男性たちが華々しく戦う一方、彼女たちが細々と生活を紡いでいくさまが描写されている。
彼女たちは微笑みながら(時には嫌悪や怯えを隠して)政治を動かす男たちに葡萄酒をついでまわり、機を織り、怪我人の看病をし、寝台での務めを果たす。同性同士で集まって噂話をし、悲しみに打ちのめされた女性がいれば寄り添って慰め、互いに声をかけあう。
でも彼女たちは物だから自身の運命が変わる重要な場面でも黙って男たちの間でやりとりされるしかない。大きな物語では声を奪われてきた女性たちの視点でそれを語りなおすことで、『女たちの沈黙』は彼女たちを生身の人間として描こうとしている。期待を裏切らない地に足のついた作品。

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『女たちの沈黙』欠点をひとつ挙げるなら、メインヒーローである(ロマンス小説とかじゃないからこの呼称もなんだけど)アキレウスよりその親友のパトロクロスのほうが魅力的なことです。
アキレウスは残酷で傲慢で何考えてるのかわからない雰囲気なんだけど、パトロクロスは戦利品としてアキレウスのそばに侍る主人公ブリセイスを気遣い、雑談をし、生身の人間として彼女を認めてる感じがあって、はやくから情緒的な繋がりができるのだもの。
それに、これはストレートな悪口なんだけど、アキレウスって今まで主人公に無関心だったくせに、主人公がたまたま海に入った後に寝台にやって来たら彼女に母を重ねてとたんに盛り上がって乳房吸ってくるような男だよ。やめなやめなパトロクロスにしな、いやまあ主人公に自身の主を変えられる自由なんてないんだけど。でもパトロクロスにしな……

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