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五月あかり・周司あきら『埋没した世界』読む。
シスジェンダーという圧倒的にマジョリティにいる立場で安易にわかったふりしたくないな、なんて考えて私はこれをシス/トランスの区別を前提とした他者の物語を読むつもりだったのですが、それぞれ異なる経験をして異なる感じ方や考え方を育んできた生身の人間として語られる手紙を読んでいると、当然のことながらトランスジェンダーという属性だけで括れない個人の人生があることを思いましたし、他人との関わり方やセクシュアリティについて共鳴してしまう(なんて言えばいいかな? 重なるだと近すぎるし、共鳴でもまだ近い)部分もあって、読み始めて結構早い段階で最初のシスジェンダー私/他者であるトランスの人たちという前提は崩れました。

やっぱり自身の感覚としては実感できないことはあるし、マジョリティ/マイノリティの優位性の差を無視して、トランスジェンダーの人にもシスジェンダーの人と同じように色んな人がいてみんなそれぞれ感じ方や考え方が違うんだねなんてまとめてしまうのは傲慢で乱暴だとは思います。ただ、全体とおして深く感情や思考の掘り下げられた豊かな語りを読んでいくのは稀有な経験で……なんていえばいいかな、シスジェンダーを前提として組み立てられた思考や言語とはまたずれたところにマイノリティとしてのそれがあって、私が本当には触れられないはずのそれを追いかけられたような錯覚がしています。
これもわかったような気になってる傲慢なマジョリティ仕草だったら申し訳ないんですが……。『トランスジェンダー問題』から続けて読んでよかった本だと思います。こうして読書する機会を与えてもらってありがたい。往復書簡続いているそうなので、また同じように続きを読むことができたらうれしいです。

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