「そもそも、『国を失った流浪のユダヤ人』などという発想は、古代の帝国の侵略、支配についてまったく常識を欠く。…基本的には、特に農民については、外に追い出してしまったのでは侵略の意味そのものが失われてしまう」「パレスチナにずっと生き続けたユダヤ人は…宗教的にも言語的にもイスラム化・アラブ化していった。その末裔が今日のパレスチナ・アラブ人である」(田川健三『書物としての新約聖書』pp.243-244)

「ディアスポラのユダヤ人人口の増大を改宗者の数によって説明することは、現代のイスラエル国家主義者が強度にいやがることである。それならば、二〇世紀になって、彼らが『自分たちの祖国に帰る』というイデオロギーは嘘だということになるからだ」(田川健三『書物としての新約聖書』p.238)

これに関連してるの、NHKの「1からわかる!…」の写真で引用した部分ね。端的に間違い。

www3.nhk.or.jp/news/special/ne

田川さんの指摘をもういちどまとめておく。

1.古代のユダヤ人のディアスポラ(パレスチナ地方からローマ帝国の各地への移住)は、ユダヤ王国の滅亡以前から始まっている

2.ディアスポラの人口の多さは、パレスチナ地方からの移住や移住先での出生だけでは説明できない。ユダヤ教への改宗者の多さが想定できる。

3.ユダヤ王国が滅ぼされた後も、その国民やユダヤ王国に属さないユダヤ人はパレスチナに住み続けた。

4.ゆえにユダヤ人を「古代にパレスチナから追い出されて世界中に散り散りになった人々」として理解するのは間違い。

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@lematin
だいぶ前に読んだので、記憶が定かではないのですが、シュロモー・サンドの『ユダヤ人の起源』にも、同じようなことが書いてあったと思います。

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