アントニオ・タブッキ『レクイエム』鈴木昭裕訳、白水社。
ある七月最後の日曜日、炎天下のリスボンをさまよい歩く主人公。この日会うのは読んでいた本の中の登場人物、死んでしまった友人、恋人、若き日の父親、偉大な詩人である "食事相手"、など。亡くなっているもしくは現実に存在しない人たちと会う約束をして、ごはんを食べて、会話する。そういうふらふらした話で、語りが特別に好きな本。食べもの小説でもあり、巻末に各章に登場する(だいたいの章に食べものの話がある)ポルトガル料理の詳細が書いてある。食いしんぼうだ。
読んだのはもう何年も前だけど一度は七月の最後の日曜日にポルトガル料理を食べて、この本を読んでみたかったんですよね。満足しました、美味しかったし。
"今日は七月最後の日曜日ですね、足の悪い宝くじ売りが言った。町はからっぽ、木陰にいても四○度はある。記憶のなかにしか存在しないひとに会うのには申し分のない一日だと思いますよ。(略)それでは、良い一日と幸運とにめぐまれますように。"(同書、17–18頁)#マストドン読書部 #読書