『ヒトラーのための虐殺会議』(2023)
監督/マッティ・ゲショネック
脚本/マグヌス・ファットロット、パウル・モンメルツ

湖のほとりに建つ白い邸宅に続々と黒い車がとまる。午前中に開かれる会議に参加するために軍人や官僚が集まっているのだ。議長・国家保安部代表ラインハルト・ハイドリヒの元に集まったのは高官15名と秘書1名。会議のテーマは「ユダヤ人問題の最終的解決について」ーー

おじさんたちが机にへばりついて会議しているだけの映画なのに、100分間息をつめて観てしまった。白熱した議論が展開されていたし、なにより「面白かった」ーーそう、この会議はすごく「面白かった」

最近会社で色々とめんどくさい会議をしているオットーはこの映画を観て次のような感想を述べた。

「議長の手腕が凄い。まず、会議の目標を明確に定めているのが偉い。色々と反論や横やりがありつつも最終的に100点満点中80点位で達成したし、80点の内容でも全員の合意がとれたので議長がプロジェクトの主導権を得た。よくできた会議には下準備と根回しと数字が大事だなと良く分かった。でも、こんな映画でわかりたくなかった!!!」

ほんまそれ。

続く)

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『ヒトラーのための虐殺会議』感想続き 

様々な観点が提示されて、問題点が明らかになり、どんな解決策をなしうるかを話し合いで決めていく様は、池井戸潤の小説に出てきそうだな~と思った……そこで話し合われている内容が「ユダヤ人をどうやって効率的に殺害して絶滅させるか?」でさえなければ。

参加者たちは全員、自分の職務を全うするためによりよい意見を出し合っていた。もうすぐこどもが産まれる人も、前線に立って戦争の残酷さを経験した人もいた。そういう「優しくて優秀なひとたち」が淡々と話し合いを進めていく。会議の参加者たちは全員、ユダヤ人も人間であるとしっかり理解したうえで話を進めていた。「収容所への移送を無理やり進めると動揺して暴動が起きるので他の方法を考えよう」みたいな、ひとの心理を理解していなければ出てこない意見がたくさんでてきた。だから、彼らは自分たちが何をしているのか分かった上で「どう絶滅させるか?」を議論していたのだ。この世界のためにそうするべきなのだと信じて。

もう一度言う。観ていてすごく面白い会議だった。明確な目的があり、出席者は全員熱意にあふれ、活発な議論がなされて、問題点が提示され、解決策を話し合う、凄く「有意義な会議」だった。その面白さが、なんなら『関心領域』よりも怖かった。

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