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『女たちの沈黙』
著/パット・バーカー
訳/北村 みちよ

トロイア戦争の終盤を舞台に、戦争に翻弄される女性たちと戦いをやめない男たちの物語。

凄く静かな読後感で、全体の雰囲気は『ハムネット』に似ていた。ただ主人公の状況は『侍女の物語』だったので、読むのはしんどかった。

ギリシア神話もトロイア戦争も予備知識を持たない状態で読んだので、時代背景と人物名の整理に少し苦労した。ただ「どんな時代であれ戦争はクソ」という理解さえあれば読み進められる。戦争がどういった名目で起きて、誰が闘い、誰が殺されて、語り遺されるのはどういった存在かについて描かれている。言わずもがな、語られるのはいつも剣を持って前線に立つものだ。それは今でも変わらない。ゼロ戦に乗る男たちの物語は語られても、南方で餓死した男のエピソードは物語られないように。あるいは、住処や家族を奪われたうえに勝利の褒章として男たちにあてがわれる女性たちの物語が記録されていないように。

沈黙に潜む傷、喪失、慟哭、愛。伝説のなかにだってかならず存在していたけれど「ないもの」とされてきた物語を語りなおすための小説だったとおもう。

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