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新年一冊目の読書はこちら。
『洞爺丸はなぜ沈んだか』
洞爺丸の船長以下乗組員、気象台の職員、乗り合わせた乗客らの視点を切り替えながら時系列に沿って進んでいく。様々な可能性が潰えながら約束された破滅へと進んでいく展開から目が離せないし、プラス『タワーリング・インフェルノ』ばりに誰が死ぬのか分からないという尾籠な興味で読み進めてしまう。
その観点から(ネタバレになるかもしれないが)死者に雄弁に語らせすぎるきらいがあり、初出の1980年はまだプライバシーに関する議論が未熟だった事もあると思う。
特筆すべきは函館で出港を強行した洞爺丸と対照的に青森でじっと待機していた羊蹄丸およびその船長の描写で『羊蹄丸はなぜ沈まなかったから』という観点からも読める。これは『八甲田山死の行進』と同じ手法。ここはかなり慎重な語り口で、洞爺丸の船長が決して軽挙妄動で出港したわけではないことを強調している。
ただ洞爺丸船長もまた「雄弁な死者」であり、もう一人の「雄弁な死者」である若い女性の心理描写があまりにメロドラマチックなのでこの辺相手を選んで筆を走らせている感じがして引っかかる。
とは言え本書がよく売れたのは事実であり、今でも(背徳感込みで)しっかり面白い。
人の思いや営みを跡形も無く粉砕する自然災害の無慈悲さに茫然とする読後感。

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