エイリアン・ロムルス 首を傾げている 

見た直後: めっちゃ面白かった〜という気持ちとデイヴィッド8が舌打ちしてるとこと両方あって、面白かったけど悩ましい。以下思い出しつつ書いた感想
レインたちがどうしても脱出しなければならず、それゆえにステーションに迷い込むという導入からめっちゃ作りは上手くて、エイリアンの胚が目覚めちゃってそこから逃げなくては……という構造もうまい。資本主義とウェイランド・ユタニ社は悪! という気持ちになってたんですけど、フェイスハガーちゃんが目覚めてゼノモーフちゃんが動き出して……というところからところどころ気になると言うか、まあデイヴィッド8はだいぶ前から舌打ちしてたんですけども(後述)。
なんかすごいうまいんですけど、ピンチを呼び込む最悪ピタゴラスイッチみたいなのがあまりにもピタゴラ感があって何か乗り切れないところがあったんですね、わがままで申し訳ないが……。一回二回ならともかく、脱出までに何度もあると、背後の脚本の存在が意識に上ってしまってうまいな〜とは思うものにそれ以上に感想がない。うまく作っているし、説明も上手なのでエイリアン入門編とそてはいいのかもとは思いつつ。

エイリアン・ロムルス フェイスハガーちゃんとゼノモーフちゃんたち 

フェイスハガーやゼノモーフもそういう脚本のパペット感があり、この子たちはそういう生き物としてこの映画に登場しているんだなあと感じられるのがちょっと悲しかった。
エイリアンシリーズのエイリアンは立てば最悪座れば破滅歩く姿はカタストロフみたいな宇宙で絶対出会いたくない生物で、そういうキャラクターとしてデザインされているけど、それなりに生活環と行動原理があり、合理的に解釈できるとことそうでもないところがあり、最悪の生物として生きていて、生きる過程で人間の都合を踏み倒してる感があるのが好きなところでもある。ロムルスのエイリアンたちはあんまりそういう意味での生き物じゃない感じがして、そこが見終わった後何か寂しかった。
凶悪!! 感はあるんですけどゲームっぽいというか。攻略法が示されているからかな、それも最悪ピタゴラスイッチに組み込まれてて、パズルっぽい。
最後に出て来たやつはシャイガイっぽすぎてずっと「シャイガイ……」と思っていた(SCP)。エイリアンのデザインほんと秀逸だな。

エイリアン・ロムルス 登場人物について(プロメテウスの内容にちょっと触れてる) 

あと生まれたり死んだりというか、チェストバスターや「出産」のシーン、後者は特に何かフェチ的なものを感じてあんまりというか結構嫌だったかな……。プロメテウスの帝王切開(?)もフェチじゃないとは言い切れないけど、大人のガッツと子供のパニックじゃだいぶ見え方が違うし、エイリアンシリーズにあった「自分の体が自分のものではないという恐怖」のメタファーの流れとして10代の妊娠があるとしても、そこはもっと慎重に扱ってもよかったのではないかと思う。
登場人物がみんな子供すぎてしんどかった。一方でちょっと人物造詣も配置も図式的すぎやしないかい? というところも感じて、「それだけしんどい環境で、だから遠くへ行きたい若者の物語」の面よりも、映画都合の方を強く感じてしまった。
エイリアンシリーズの腹の据わった女たち、私も大好きですけど、「唯一の生存者」のセリフが出て来た時にスッと冷えてしまって、そのためにあの子たちは死んだんですか? と思っちゃった。

エイリアン・ロムルス デイヴィッド8が舌打ちしてて 

アンディについては、私の中のデイヴィッド8が「シャキッとしてるアンディとふんわりしているアンディ、後者の方がアンディの本来のように描写されていますがどちらも彼自身とは言えないのでは?」「個人に対して愛着や葛藤を示すかのような動作をすることが人間にとっての自我の証明なのですか?」とか言う。シャキッとしたアンディや会話の中でのアンドロイドが、合理的で(人間にはできない)非情な判断を下せる、みたいなとこも葛藤の外部委託感があってこれも物語の装置というか、上で書いた図式的すぎるという印象に繋がっている。まあアンドロイドを文字通り受け取れば物語の内でも外でも装置なんだけどさ。というかデイヴィッド8ってだいぶ破格だよなあ。ルークみたいな「悪」(ウェイランド・ユタニ社の手先であり物語に最適化されているという意味で)のアンドロイドとも違って何か……何なんだあのアンドロイド?
あとちっさいCDみたいなのの入れ替えでアンディが変わった時に、スペックが十分でなくて潜在能力を発揮できなかったみたいなことを言ってたと思うんですが、その「能力を発揮できていない」状態がまるで子供みたいな感じである点については審議中です。

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エイリアン・ロムルス 追記 

登場人物のとこで10代って書いたけど本編ではいくつかわからないな……。でもすごく若いよね。レインは正直10代くらいかと思ってたけど、演じた人は二十代後半だった。
本編、最初にエイリアンというかチェストバスターの犠牲になるのがアジア系で丸刈り(=伝統的ジェンダー観にそぐわない)のナヴァロなのと、エイリアンを「出産」するのが父親は「その辺の男」という子供を妊娠しているケイなのが何だかなあと思う。エイリアンシリーズで描いてきたことと逆のことをしている気がする。フォロワーさんも言ってたけど人種差別的でミソジニックという指摘はその通りだし、エイリアンが「悪い女」への罰のメタファーに見えかねない。
ビヨンとタイラーはまんま「悪い男の子といい男の子」(あえて「子」で言ってます)なんだけど、ビヨンのように若い世代がトキシックな価値観を内面化するのはそれほど不思議なことではないし、誰かをいじめなければいられない様子は、先行きのないジャクソンの環境を踏まえれば痛々しくもある。コヴェナントでもプロの大人がパニックになってたんだから、素人があっさり死ぬのはそれこそ「不思議ではない」のかもしれないけど、やっぱちょっと釈然としない。
と思ったけどこの辺りは監督のカラーなのかなあ。

エイリアン・ロムルス 追記2 

最初の方の「先行きがない世界で外へ出ることを渇望する若者たち」の話、めちゃ描き方がよかったんですけど、それがあんまり絡まないままエイリアンシリーズの話にすり替わっちゃって……というふうに感じるのが釈然としないとこかもしれない。ドントブリーズの監督って知ったらなるほどだけど……。構成もエイリアンシリーズへのオマージュも上手いんだけど、監督のカラーが割と実はコアになる要素と喧嘩してるとこないですか?
アンディに関しては、そんなふうに描写してしまうと「それはどっちに転んでも、『私たち』になっても、結局人間の側の選択なのではないか!?」と思うんだけど、この辺りはエイリアンというよりコヴェナントが好きのラインから発生しているので……。はい、あの、自由意志を持ったアンドロイドの反抗のモチーフに七年間囚われていて……。
最初の方の無音の宇宙は怖くて不穏で良かったな〜。ドルビーシネマで見たら、宇宙の色と音が怖くてそこはすごい良かったです。見てる時は結構楽しかったんだけど、エイリアンやコヴェナントで私が好きだと感じたものに繋がる部分はあんまりなかったなと思う。

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