大岡昇平は1905年頃の日本には小説でも批評でも詩でもない「文」としかいいようのないジャンルがあったことを述懐しています(『小説家夏目漱石』)。室井作品はたとえば漱石の諸作品がそうであったような、西洋的な「小説」という制度からはみ出しつつ「文」としか言いようのないような圧倒的な思考を展開する書き手です。
その室井作品最大の長編『エセ物語』のクラウドファンディングが募集中とのことです。
現時点だと、室井作品は中央公論新社から刊行された『おどるでく 猫又伝奇集』が入手しやすいです。
他に双子のライオン堂から『多和田葉子ノート』『詩記列伝序説』が刊行されています。