SS②
「雲深不知処は禁酒だ。それは屋根の上だろうと地中だろうと同様だ」
「はい」
 魏無羨は神妙に返事をする。その態度を見て藍啓仁も静かに諭す。
「しかし静室でのことは忘機の居処ゆえあれに任せているだけだ。拡大解釈するでない」
「つまり静室に戻って飲めってことですね」
 藍啓仁が雷を落とす前に帰ろうと酒甕を抱えて廊下へ飛び降りる。目の前に下り立った魏無羨に藍啓仁は片眉を上げた。
 藍先生おやすみなさい、と拱手で挨拶をしてから走って離れる。走るでない! と結局叱られたが魏無羨も悪びれた風もなく顔だけ振り向いて返す。
「藍先生こそ大声禁止ですよ」



SS①
 夜も更けた頃、魏無羨が蘭室の屋根の上で酒甕を傾けていると下の通路を藍啓仁が通りかかった。反射的に息を殺して気配を消す。
 藍啓仁は立ち止まり空を見上げた。輝く満月に目を奪われたらしい。きれいに整った顎の髭を撫でてじっと見つめる。
 鈴虫の鳴き声に紛れて魏無羨は小さく息を吐く。
 満月に満足した藍啓仁がまた歩き出そうと振り向く。視界に何かをとらえたのか弾かれたように屋根の上に顔を向けた。魏無羨はびくりと背中を振るわせる。さすがに気づかないわけがないかと観念して挨拶をした。
「あ、藍先生こんばんは」
「魏無羨。そんな所で何をしている」
「今朝から藍湛が西南の方に夜狩に出かけていないんですよ」
「知っておる。数日は戻って来まい」
 今さら何を言っているのかと藍啓仁が渋面を作る。魏無羨は気まずくなり頭をかいた。
「それでなかなか眠れないので月見酒をと思って。ちょうど満月がきれいでしたし」
 魏無羨の説明に藍啓仁は盛大なため息で返す。



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