井口奈己『左手に気をつけろ』『だれかが歌ってる』 at ユーロスペース
去年のTIFF以来の『左手』。
2本続けて観ると印象が随分違う。これは自由と孤独とロック(子供はロックしてる!)の映画ては。
左(left)の看板から、ラストの左手パラダイスでのりんの真顔の凄み。
リンゴが転がって空間を飛び越えたら、これはもう『私は猫ストーカー』じゃないですか。
音の使い方が素晴らしい。特に、最初の、音で室内から屋外に繋ぐシーンとか。ラストの、なぜか歌ってしまう(ようにみえる)子供たちのシーンとか。
『歌ってる』の後に観たせいか、去年観た時の、一見ほんわかした印象がリセットされた。
終盤、「左」の丸い看板にりんが向かっていくカットで、左にポリティカルな含意も込められているのかと思った。ラストのマダムロスを聞いてからお姉ちゃんに再開する流れとか、極左観念論の通過儀礼のようにもみえてしまう。
りんが真顔に戻った後に見える風景は、抑圧された者の悲しみと愉楽、みたいな。
井口監督のインタビューで、そうか夜のシーンなかったなと。夜の映画ばっかり観てる自分はなぜ気づかん?