チグリスとユーフラテス 新井素子 著 感想(ネタバレあり)
登場人物はみんな不幸だ。しかも、命がなくなってしまう。
それでも、どの章もバッドエンドとは言えない。
彼らは、最終的におのれの人生に意味を見いだすことができているから。
(マリア・Dは少し事情が違うけれど、自分の過ちを認めることができたので、あの経験には大きな意味があったと思う。)
どんな境遇に置かれているとしても、自分の思う最善を尽くして生きることができていれば、その人の人生は幸せと言えるだろう。
ただし。生まれてくる子どもの不幸を避けるために子どもを産むべきではないという考え方は、正しくない。…とはわかっている。
でも、率直に言えば、今ここに生きていて、生まれてきて、よかったか?と問われても、「はい」とは言いがたい。
これはもう理屈でどうこうできる問題はなく、心の奥底に根ざしているものなので。
だからこそ、彼らのように、生きていてよかった、といつか感じられるような生き方をしてみたい。