こっちも伝奇デイペペの没…
空から降りてくる小さな雪を、妙漣寺はじっと見つめた。
伸ばした掌の上に、氷の欠片のような雪が落ちる。それはすぐさま溶けて妙漣寺の手を濡らした。その水を確かめるように、手のひらを握りこむ。さらさらとした雪、おそらくこれから気温は下がるだろう。
少し考えてから、妙漣寺は視線を山へと向けた。山を、そして周囲の村々を覆う雪雲を見つめる。積もるほどではない。ただ、寒くなる。吹き付ける風の温度はすでに0度を下回っていた。
「妙漣寺、どうしたの」
「デイビット」
「寒いだろ」
「平気」
手にした新聞を抱きしめるようにして、妙漣寺は家の中へと入った。冷え切っている新聞をデイビットに手渡し、玄関の引き戸を占める。
妙漣寺がお世話になっているデイビットの家は、築百年以上の日本家屋だ。玄関だけで言うなら、家の中と外の温度はそれほど変わらない。風雨がないだけましと言ったところだ。もっとも妙漣寺が夏まで住んでいた寺はそれ以上だったので、これでも温かいと感じている。まして、妙漣寺の隣にはデイビットがいる。寒いわけがなかった。
「ねえ、デイビット。テスカトリポカっていつ帰ってくるの?」
「さあ?」
妙漣寺の質問に、デイビットは首を傾げた。