鉄紺は、黒に青と赤を混ぜて作る。かすかに緑を加えると渋みを帯びる。この渋みが鉄色である。藍瓶の中の藍は緑色に見えるが、そこに浸けた布を空気中に取り出すと酸化して青を発色する。これを繰り返して染めた澄んだ深い青色が「紺」で、ほんの少し緑に傾いた鉄紺は微かな濁りを隠した色だとも言える。藍だけで染まって青の濃淡だけで人生を生きていければ単純でよいのだが、思わぬ出来事が起これば思わぬ要素を取り込んで思わぬ色に変わって行くことも起こる。せめてその濁りの分だけ強くなれればまだしも、鉄色はただの色の名前であるので、私自身は濁っただけで強くなったりはしないのであった。