小川糸『ライオンのおやつ』 読了
瀬戸内海のホスピス「ライオンの家」で人生最後の一か月を過ごすことになった末期がんの女性、雫。ライオンの家にはおやつのリクエストシステムがあり、人生で最後に食べたい思い出のおやつをリクエストし、抽選で選ばれたものを実際に作ってもらえる。
穏やかに過ぎていく日常、死にゆく、あるいはもう亡くなってしまった誰かの人生の一部を切り取るような「おやつ」、ホスピスや島の人々との出会い、ゆるやかに衰弱していく体、増していく痛み。だんだん意識も保てなくなりながら、死への準備が淡々と進んでいく。
母がドラマを見ていたので気になって読んでみたのだけれど、死にゆく人の視界をこれだけ克明に美しく、無理なく描いているのはすごい。死への歩き方も十人十色だとは思うけど、美化しすぎなわけでも露悪に走りすぎるわけでもない、日常としての死とその過程にある別れが説教臭くなく(私の主観ですが)描けるのすごいなあ……と思っていた。
病状が進行して思い出のおやつが食べられなくても、思い出が目の前にあることに意味があるんだなあ……口に入れて咀嚼するだけが「食べる」じゃないよなあ……。
#読書
『忌録 documentX』収録の『みさき』はこちらから無料で読めるんだけど、これが好きな人はマジで『忌録』と続編の『禁忌』を読んだ方がいい
http://bungoku.jp/grand/2010/0091.html
#読書 エーリッヒ・フロムの『愛するということ』じわじわ読んでいて、ずっとぼんやり考えていたが言語化はできていなかったことを誰かが明瞭に言葉にしてくれることって快楽だな……!? と思った 現代の恋愛はものの購買に似ていて、自分という貨幣を使って交換可能な最高品質のものを手に入れることが目的になっている、とか、誰かを愛することが相手次第の一時的な「現象」(衝撃的な恋に落ちた瞬間)と混同されているために、学習と練習が必要な「技術」であると認識することが妨げられているとか 考えてたけど言語化はしてなかったことが好きな文体でずーーーーっと書いてある こういう本に出合えるのは幸運なことだ……
③新耳袋 第一夜/木原浩勝・中山市朗
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有名な実話怪談シリーズの1冊目。99話の怪談が収録されており、一晩で一気に読むと100番目の怪異が自分に起きる、というコンセプトのシリーズです。1本1本が短くて読みやすいのでおすすめです。
④強制除霊師斎 怨念旅館/小林薫
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こちらは実録マンガになってしまうのですが、口が悪いパワー系霊能力者が幽霊をなぎ倒していくシリーズです。依頼人がなんでそんなひどい目に遭ってるのかが割と先祖の因縁とかに帰結しがちなので、そういうの嫌いでなければブルドーザーみたいに除霊していく霊能者がかっこよくて楽しい。
おすすめのホラーコンテンツを聞いていただいたのでこちらにもまとめておこう。
Kindle Unlimitedだと980円でホラー小説、漫画がかなり読み放題に含まれるので、試してみてもいいかもしれません(この中だと①、④のシリーズがUnlimitedの読み放題に入ってます)
①忌録―documentX― 阿澄思惟
https://amzn.asia/d/flwHzCk
手記や新聞記事、ルポルタージュの体を取った連作ホラー短編集です。人間、呪術、幽霊その他の「怖い」が集合しており、どの話にも漠然と関係がありそうですが結論が作中で明らかになることはありません。自分で考察して楽しみたい(あるいは他者の考察を読み漁って面白がりたい)人向けのホラーです。
②どこの家にも怖いものはいる 三津田信三
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「家」に関する連作短編集です。蔵から発見された「家」とその怪異に関する複数の手記を読み解いていく内容になっています。こちらは幽霊系ホラー。明言はされていませんが、①を書いた阿澄思惟と三津田信三は同一人物ではないかと言われています。
もうすぐ明ける空を見ている字書き/↑20/文学と服飾と教育の話が好きですがそんなに実のあるトゥートはしないよ/無言フォローごめんなさい/アイコンイラストは和仁あさこさんにお願いしました