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小川糸『ライオンのおやつ』 読了 

瀬戸内海のホスピス「ライオンの家」で人生最後の一か月を過ごすことになった末期がんの女性、雫。ライオンの家にはおやつのリクエストシステムがあり、人生で最後に食べたい思い出のおやつをリクエストし、抽選で選ばれたものを実際に作ってもらえる。
穏やかに過ぎていく日常、死にゆく、あるいはもう亡くなってしまった誰かの人生の一部を切り取るような「おやつ」、ホスピスや島の人々との出会い、ゆるやかに衰弱していく体、増していく痛み。だんだん意識も保てなくなりながら、死への準備が淡々と進んでいく。

母がドラマを見ていたので気になって読んでみたのだけれど、死にゆく人の視界をこれだけ克明に美しく、無理なく描いているのはすごい。死への歩き方も十人十色だとは思うけど、美化しすぎなわけでも露悪に走りすぎるわけでもない、日常としての死とその過程にある別れが説教臭くなく(私の主観ですが)描けるのすごいなあ……と思っていた。
病状が進行して思い出のおやつが食べられなくても、思い出が目の前にあることに意味があるんだなあ……口に入れて咀嚼するだけが「食べる」じゃないよなあ……。

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