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もう何年も同じ乾物屋さんで海苔とお茶を買っている。先日、海苔を切らしたので立ち寄ると、いつも買っていた海苔がない。ばかりか、ギョッとするほど海苔の種類が減っている。
お店の人に尋ねると、もう海苔が全然採れないのだと。海水から養殖の枠を引き揚げても海苔が育っていないんだそう。数年前から、不作なんですよ、と耳にすることがあった。でも「今年は不作」という例外的な事態のように受け止めていた。ちがった。ポイントオブノーリターンを過ぎたのかもしれない。
「海水温の上昇ですか?」と問うと、そうだと言う。私は、つい「もっと北の方の海では採れるとかはないんですかね?」と縋ってしまった。そうは聞かないとのこと。それに、そういうことではないよね。
気候変動への不安と、日々を何とか人らしく暮らそうという衝迫の間に立ち込めていた不安が急に焦点化した。いつもの海苔が買えなかった。それだけと言えばそれだけなのだけど、私にはこの瞬間が「ああ、もうこれまでのようには暮らせないんだ、変わっていくんだ、どこかへ向かって」と知った時だった。お店の方に「海苔がなくなるなんて私はどうしたらいいんでしょう」と聞いてしまってから、「すみません、そこのを3帖いただきます」と知らない海苔を買って帰った。けど、その海苔を見てはまとまらない思いや焦りが湧く。

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