誇り高き魔術師サイベルと、人を信じられなくなった王様ドリード
私は、この2人の共通点は「愛する資質(capability to love)」にこそありそうだと感じている。
ミスランがサイベルに告げた台詞も脳裏に浮かぶ。
‘You are capable of love. It is a dangerous quality.’
(McKillip, Patricia A.《The Forgotten Beasts of Eld (FANTASY MASTERWORKS)》p.87 Orion. Kindle版)
実のところこれはドリードにも当てはまる要素だった。
愛する資質を持つ、というのは即ち「傷つく資質」を持つということでもあり、その点がサイベルとドリードに共通しているのに結構ぐっとくる。
かつての王妃リアンナへ想いを捧げた過去のように、相手に自分の感情が受け入れられなければ「悲しい」と思う。そして、彼女が自分ではなくサール領のノレルを愛していると悟れば「苦しい」とも思う。
ドリードが作中でああなったのは、愛を抱ける可塑性の心を持っていたからこそ……。
それこそが、彼を再起不能なまでに傷つけた。
https://www.chinorandom.com/entry/2023/07/10/222523
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