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大西民子 

大西民子の評伝読んでよかった作品

夜もすがらわれに来てゐて雪の上に跡も残さず去りし何もの
落ちてゆく眠りのなかにまざまざと見えて昇れぬ階梯を持つ
ひとすぢの光の縄のわれを巻きまたゆるやかに戻りてゆけり
てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る
かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなく今は

「ひとすぢの」の〈の〉の使い方がいいのと、傷はじめ、代表作の「幻の椅子」など象徴性と空想性に富んだ作品が多くていい

病みおれば遠ざかりゐてかなたなる人と人とのさかい目も見ゆ
本あまた枕べに積みて臥す君が注射せし痕の痛みを告ぐる
ひつそりと残雪ふみてもだしゆく傷つきやすき君と知るゆゑ

など、書物を読んだ歌だったり後に離婚した夫との恋愛を主題した相聞歌も儚さと怜悧なリアリズムがあって好き。そしてどこか齋藤史を彷彿させる次の歌もいい

水底の藻屑とふ語にもあこがれき死は美しと思ひゐし日々

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