私が学生の時、一切板書しない、配布物もなし、ひたすら訥々と話し続ける講義をする先生がいた。あまりの不親切さに私はこの先生が大嫌いで、嫌いだったこともあって試験でもあまりできず、不合格になった。しかし、必修科目だから逃げられない。
翌年、完璧に攻略してやろうと考え、仲間と協力してこの教師の話すことを片っ端から書き留めていった。試験前にはそれぞれのノートを突き合わせて、辻褄が合う様に講義内容を再構成していく。そこまでやると逆に、90分週2回で合計30回近い講義がちゃんと一貫した話になっていることに驚嘆することにもなった。結局、評価は優だった。
相変わらずその先生は嫌いだったが、大学時代、最も多くを学ぶことができた講義の一つであったことは間違いない。しかも、そういう先生からしか学べないことというのが、確実にあるのだ。そんな先生ばかりでは困るとは思うが、そんな先生がいないのは、そんな先生の居場所がなくなる様に大学や世の中が変わっていってるのは、寂しいとも思う。