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【配信後記・2023年6月2日】
ブルームズデイまであと2週間になりました。今週は糖蜜トムの後編、主役は相棒のホスティーです。ホスティーとはドイツ語で「ご聖体」のことですが、本編では銃を入手したり泥酔したりと、散々な振る舞い。

音楽への参照が多い章でしたが、それでもジョイスは必ず政治的な何かを含めてもくるもので、それが今週は「お祭り王」聖フィナータへの言及でした。フィナータ王は674年に即位し、1世紀から7世紀までレンスター県民に化せられ続けてきた「ボルー税」を撤廃します。これによってダブリンを含むレンスター県の人々は潤い、イチゴ売りや蜂蜜売りの声、そして花売りや漁師が鮭を売る声がミーズ通りの市場に響き渡りました。

そこから歴史を早送りし、ジョイスはプロテスタントの地主がカトリックの民衆を苦しめている19世紀末で、パーネルより先にグラッドストーンの記念像が造られそうになった一幕を想起します。ヘーゲルが歴史の進歩性を大陸で説教していたかたわらで、アイルランドの人々は地獄のような貧困と歴史からの抹消の危機に直面していたわけです。

フィナータ王が拾った少年が聖コロンバの伝記を書くという歴史も、なかなか味わい深いものでした。

アーカイブ動画: kenjihayakawa.com/portfolio/20

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