むむむと真剣にお願い事をしている横顔をちらりと盗み見る。何をそんなに願っているのか。彼女の考えている事は大方お見通しなのだが。チラチラと視線を感じ、勝負だけではない事もお願いしているのか、と淡い期待に胸を躍らす。
長年の片恋が叶い恋人同士になった彼女との関係性はそんなに変わらない。僕としてはもう少し甘い時間を過ごしたいとは思っているのだが。
「あっ去年のお守り持ってくるの忘れちゃった」
「また来年で良いんじゃない? 来年も忘れたらその次でも良いし」
「あっ、うん。そ、そうだね。来年で良いか」
「うん。それで願い事は教えてくれないの?」
「秘密って言ったじゃない! それよりあんたの引いた大吉いい加減見せなさい! どうせ変な事……書いて、ないだと?」
御神籤を結ぶ直前、どうにかして僕の手元を見ようとするナナリーの白いコートが跳ねる。
「結ぶの? 良い事しか書いてないのに」
「うん、一生の問題だからね」
「重。一生って。あっ!一生勝ち続けますように、とか?」
君じゃないんだから、そう突っ込みながらも、まぁ間違ってはいないかな、となるべく高い位置の枝に結ぶ。
御神籤はあくまで気休めと思っている事もあるが、こればかりはどうしても気になってしまうんだ。
『結婚運 待て、将来吉』
#1T67SS