素直じゃない彼らの攻防戦
最近バレンタインという異国の風習が話題になっている。女性が想い人にチョコを渡して告白するという行事らしい。愛を込めて恋人や伴侶に渡す場合もあるようなのでナナリーも飯食い友達に渡すつもりで準備していたはずだが、そう簡単に事が運ばないのがあの二人である。ハーレで人目も憚らず痴話喧嘩を繰り広げていた。
「君さ、何か僕に渡すものない?」
「……ないです」
「フェルティーナの家でチョコケーキ作ったらしいけど、一体誰に渡すつもり?」
眼光鋭く睨んでいるが会話の内容はチョコのおねだりだ。尋問みたいなことをせずに素直にほしいと言えば良いのに。なんで知ってるんだと悲鳴を上げた親友がすごい勢いでこちらを向いた。ニケなの!?と顔に書いてあるので首を横に振って否定する。絶対サタナースの仕業だ。
「誰にも渡さないわよ!」
「もしかしてお腹がすいて自分で食べた?」
「違ーう!とにかく渡せないの!私には無理!!」
しばらく攻防が続いていたがやがてナナリーが押し切られ、小さな箱を取り出す。潤んだ瞳でロックマンを見上げ……
「チョ、チョコと一緒に、私も食べてっ」
ロックマンが固まり、あちこちでいきなり物が燃えた。バレンタインは例の台詞を言うのが決まりだと吹き込んだ銀髪男は後日盛大に髪を燃やされた。
#1T67SS