「わたしは、率直にいうが、わたしほど、異端だとか、反俗だとか、叛骨だとかを気どっている人間を憎んでいるものはすくないのではないかと考える。かれらは、なにを「善」といい、なにを「悪」というか。要するに、かれらにとっては、オーソドックスに反抗するものが「善」で、追随するものが「悪」なのだ。しかるに、わたしは、古在由重流に、いささか単純化していうならば、プロレタリアートおよび、それにつながる大衆の利害に役にたつものは「善」で、役にたたないものは「悪」だとおもっているのだ。なにが役にたち、なにが役にたたないかをきめてくれるものは、道徳ではなく、科学にほかならない。」
花田清輝『政治的動物について──現代モラリスト批判』青木書店、1956年、55頁。
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