さらさらした雪が降る山の上にしばらくいて、吹く風が恐ろしく冷たいけれどその他は過ごしやすく快適だ~と安らいでいたら、平地の世界に帰ってきてすぐ39度の高熱が出た……。
それも病院に行って薬を飲み、1日寝ていたらあっという間に下がってしまった。
幼少期から体調を崩しやすく、頻繁に小児科のお世話になっていたので、成人して昔よりは身体が丈夫になってからも発熱に「懐かしさ」のようなものを感じる。
親しみ、と呼ぶほどではなく、できるだけ忌避したい程度には嫌なもの……でも、自分にとても近いと判断できる何か。
頭痛に筋肉痛にのどの痛み、また寒くて震えていたかと思ったら今度は熱の塊が内臓の奥でごろごろして目も虚ろになるあの状態、そう、風邪をひくって確かにこういうことだったと鮮明に思い出される。
起き上がるのにも寝返りを打つのにも低い呻き声を上げずにはいられない、のたうち回るほどの発熱の苦しみは、だから懐かしい。
こういう状態にある時の、ほとんど唯一といってよい利点は、果物が世界で一番おいしいと感じられることかも。
特に、冷やしたキウイやモモ。
もう素晴らしくおいしい。熱を出していると。
それらが何にも勝るごちそうだと実感できるのは、私にとっては良くない状態の中に見出せる、数少ない良いことだった。