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物語の中にしか存在できない海の深いところと、浅いところの水を汲んできて、きっかり半分ずつ混ぜ合わせ作られたソーダ水。

金沢八景の駅を出て、シーサイドラインの高架橋を辿るようにして進み始めると、少しして頭上を走る列車に追い越される。
姿が見えなくても、音がするので分かる。

右手側に住宅街、そして左手側には小型の船舶が横付けされた岸。
陸地と海との境をなぞるような位置を通る高架橋の軌跡は、長く伸びて……やがて大きく海の側に逸れた。並ぶ太い柱は視界の外に続いてゆき、野島公園や八景島がその先にはある。

横から風を受けて歩道を道なりに歩き続ける。

しばらくしたらコーヒーと書かれた旗がはためいているのが見えてくるだろう。
不思議な形にまるく切り抜かれた白い外壁から奥まった場所、水色の扉には営業中の札がかかっていて、取手を引くと想像以上に軽い感触でベルの音とともに開かれた。


chinorandom.com/entry/2023/12/

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