街を歩く人々が上着を羽織り、さらにそのうち半数くらいが首にマフラーを巻きつけるようになる頃。
色々なお店に「赤い服を着て白く長いひげを生やしたおじいさん」の描かれた商品が、たくさん並ぶ。
そのおじいさんの絵が印刷された品物の数々を見ていると、温かいような寂しいような気持ちになって、家に帰りたくなったり、でも同時にそのまま違う土地に行ってみたくなったりもする。
不思議。
赤い服を着て白いひげを生やしたおじいさんは、絵の中では大抵、微笑みを浮かべているようだ。
その周囲にいる子供たちも、背中に翼を持つ小さな者たちも、リスやクマやノウサギなどの動物も誰ひとりとして悲しそうな顔や怒った顔はしていない。星の見える夜空の下、世界は危険な場所ではなく、家屋の開口部から漏れる橙色の灯りで照らされるための舞台になっている。
綺麗で、だからこそ私はむしろ奇妙なほどはっきりとした疎外感を感じるのだろう。でも、決して入れない場所は、足を踏み入れることができないから美しいままで在る。
窓に穴を開けて紐が結ばれたような商品を1つ買った。
深緑の針葉樹が茂る区域に設けられた柵の内側で、おじいさんが大きな布袋(革袋かも)を逆さにし、建物の中に大量の小箱を注いでいる。
天使たちがその傍らで、果物を手に順番を待っている。