ピーター・S・ビーグル〈最後のユニコーン〉鏡明訳、読了

本を開いている間ずっと、ハガード王のことを考えていた。

マキリップの〈妖女サイベルの呼び声〉を読んでドリード王に延々と思いを馳せていたみたいに。
あーあ、また「何かを信じられなくなった王様」のこと考えてるよ、この人……って自分に対して呆れていたら、この〈最後のユニコーン〉のあとがきで乾石智子氏が実際にサイベルの作品名を出したものだから、ちょっと面白かった。同じ文庫から出ていて絶版なんだけど復刊しないかな。閑話休題。

『だが、わしにはわかっていたのだ、自分の心を投げ出すほどに価値のあるものはないことを。なぜなら、何物も永遠には続かぬのだから。そしてわしは正しかった。そこで、わしはいつも年老いているのだ』
『それでも、自分のユニコーンたちを見るたびに、いつもあの森の朝のように感じる』
P・S・ビーグル〈最後のユニコーン〉(2023) 鏡明訳 p.296-297 ハヤカワ文庫FT

今の私の内側には作品について語れる言葉が一語としてなくて、だからただ、続編という位置づけで存在している〈二つの心臓〉と〈スーズ〉に手を伸ばす……。
続きがあるのなら読まなければならない。

ユニコーンの貝殻色をした角が視界の端にある。

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