「砂糖」「綿花」「奴隷」の貿易で利益を手にしたのは商人やプランターたち。現地で砂糖を作る者たちが生んだ大金は、彼ら自身ではない者の懐に収まった。
一方、レンバタ島で20世紀末まで行われていたのは、当事者のため、今日と明日を生きるために必要な品々の交易。
しかしここも近年、暮らしの基盤は貨幣経済の影響下へと徐々に移行している。
特に現代的な漁法の変化で、船の燃料を確保するのに現金収入が必須だったり、さらにインドネシア政府が観光産業を振興しようとしていたりと、21世紀に入ってからの変化は大きい。
その上で面白いと思ったのは、『海の民』ラマレラの人々はもと移住民であり、先住民『山の民』以外との交易を島外で行ってこなかったのは「地域で立場を築くための戦略」でもあったのではないかとみなされているところ。
村の互助システムに組み込まれることで、周辺地域における安定した地位を得たとする見方。
……現代における「物々交換」について自分が知っている事柄は本当に少なく、一例として展示内で触れられていたレンバタ島の交易が、〈モガ〉というレートに基づいているのを興味深く見た。
この伝統的な価値基準の単位は「手盛り一杯」を意味する言葉だったそうで、例えば石炭や塩のひと掴み(約50g)が、1モガにあたる。