鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 すっっごくよかった!し、今この時代に観る意味のある映画だったので、観て本当によかった。何もかも期待以上でした
めーーーちゃくちゃ社会風刺が効きまくり、その上で人間や子供(次世代の象徴)へのやさしいまなざしもあり、物語が面白くアニメーションの芸術点が高く、2023年にいる立場からもう過ぎ去った昭和の時代を見ることに意味がありまくって最高だった。この映画を作ってくれてありがとう…
PG12がついているのは因習村の殺害シーンのためなのだろうけど、同じくらい大戦中の日本軍の殺戮描写もあり、それが「敵を殺す」だけじゃなく「玉砕宣言したのだから味方が生きているのはおかしい」「見込みがないのに無駄死にさせられる一般兵たち」「特攻に加わらない参謀」など、味方であるはずの身内の中で軽んじられてきた命から目を逸させないところがよかった(こんな事実があることは全然よくないんだけど…)
こういうこと現政権は語りたがらないどころか隠したがるので、エンタメの中に記録するのは意義があると思う。
水木はこの経験があるから野心家で、下っ端のままじゃ使い捨てられるだけだ、勝って上へ行かなければと希求していることに説得力がある。高度成長期になぜ人が馬車馬のように働けたかの一面を見た。
#感想 #fedibird
ゲ謎 声と音
声優陣の演技はもう言わずもがなで、普通の人(あんなん全然普通ではないが)の木内秀信も、つかみどころのない関俊彦も良すぎ。妻の話でだけ取り乱す父、ありがとう…
沙代の種﨑敦美めっ……ちゃくちゃよかった…つらかった…あんな立場に生まれ育てられて、それでも少女であり続けている説得力がすごい。つらかった…思い出してる今もつらい。泣きそう。
長田はみんなが見たい石田彰が見れる。
鬼太郎が沢城みゆきなのズルじゃない?私がみゆきちの声とお芝居好きすぎるだけ?
音楽もいいし、環境音がめーっちゃくちゃよかったので行ける人は映画館で見てほしい!
背後からピチャン…て水音がして背筋がぞっとしたり、音のこもるトンネル、それを抜けて自然の音が一気に耳に届く開放感、無数の狂骨たちのうめき声も、全部すぐそこにある。
ゲ謎 女と東京
これは個人的な思想の話ですが、地方の人がその窮屈さから東京へ出て、東京に来てよかった!っていうの、相対的に見ればそうだろうけど、東京は決して完璧な楽園ではないと思っているので、「田舎に閉じ込められて東京に憧れる少女」が「東京では女が自由に生きられるのでしょう?」と言ったあとで、東京に出たところですべてが解決するわけではないという話にも触れてくれたところが私に響いた。
東京に出たところで重税物価高は変わらないし選択的夫婦別姓も同性婚も叶わないんだよ令和にもなったというのに…びっくりしちゃうよね…
水木は沙代を利用したけど、彼女の事情を知ったうえで一度はトンネルを抜けようとしたところ、優しいな…ほっとけないとか、自分が弱い立場であった経験があることとか、いろんな理由があって、あの状況で見捨てられるほど人間やめてなかったんだよね。
時貞に向かって「あんたつまんねえな!」って啖呵切ったの最高だった!
ゲ謎2回目 日本語字幕つき上映&音声ガイドを聞くというスーパーバリアフリーモードで観てきたよ。さすがに入ってくる情報多すぎて溺れそうだったけどとてもよかった。音声ガイドはアプリ入れればどの上映でも聴けるからぜひ。日本語字幕つき上映は、やってる劇場が限られるのだけど、もし近くでやってたらぜひ。聞こえていても楽しいよ!
⬛︎日本語字幕
聞こえていても意味を知らず聞き流していた単語がふりがなつきで出てきて助かった。具体例を咄嗟に思い出せないところに己の脳の限界を感じる。
ゲゲ郎は出てきた瞬間からゲゲ郎だったね。
Twitterでも話題になってる長田のあれは「唵」と「吽」でした。音だけじゃわかんないよぉ。
⬛︎音声ガイド
めちゃくちゃいろいろ聞かせてくれる!隠れ妖怪のことも教えてくれる。
視覚障がい者が映画を見るためのものなので、風景や表情、動作など目にうつるものを、物語を受け取る邪魔をしない平坦さで読み聞かせてくれる。ので、「見えているからわかっていても改めて言葉にされるとヒュッとなる」のがすごく多い。
「哭倉トンネルのプレート。なぐらの『な』は、声をあげて泣く慟哭の哭」
長田初登場時「耳飾りをつけている」ことを伝えてた。
初めて窖へ行くシーンのゲゲ郎「ムカデを掴み投げ飛ばす」
#fedibird
ゲ謎音声ガイド 2
表情の説明「複雑な表情の水木」「笑みが消える」「醜い表情」とかもよかった。
裏鬼道戦を言葉で読み上げられるのめちゃくちゃ効いて最高だった。父かっこよすぎ…「手すりを掴む。力を込める。バルコニーの外へ飛ばされる。着地。三匹の鬼が襲いかかる。華麗に立ち回るゲゲ郎。」みたいな…(!覚えていられないのですべてニュアンスです!)
沙代が慰み者にされていることを知ったあたりの「水木が振り向くと、長田が一撃。」はちょっと面白かった。そうだけど…そうだけど…!
地下の工場(工場ですらないあんなの)でベッドに横たわる元人間たちを映しているときに「咳き込む子供。隣から心配そうに見ている」みたいなことを言っていて、ああ、電車に居合わせたあの母娘は捕まってしまったんだ…とやりきれなくなった。
最終戦で時貞に向かって水木が斧を振り上げたときの「失禁する時貞」は普通に気づいてなかったので半ズボンの股間見て、ほんとだ…と思い、中身があれとはいえ首から下は子供の失禁姿を確認してる罪悪感にさいなまれた。
ゲ謎 社会のはなし
戦争のこともだし、終戦後の経済立て直す段になってもやっぱり権力構造ははっきりとあって、弱いものは虐げられ続けるという話を一貫してしていた。
戦場でも、会社でも、田舎の豪族でも、やっていることの本質は同じ。そういうことが全部ずっと、あらゆる時と場所で繰り返されて、そのたびに苦しむ人がいて、その苦しみすら顧みられなくて、怨念が妖怪になる。
だから妖怪ぜんぜん怖くなかった。そうなってしまう理由が伝わってくるから。そういうふうに描いてくれたから。
かといって「本当に恐ろしいのは人間」みたいな言説を垂れるわけではないところもよかった。鬼太郎の母は人間を愛したし、父は妻を愛し子を想って、水木は彼らの記憶を失っても、墓場から生まれた不吉な子供を抱きしめた。
人間のこと諦めてない映画だった。