センシティブな則清とか加則加とか
本気でそうするつもりなら、わざわざ清光にこんなことを言わないに決まっているからだ。
しかしそれでも気になることはあった。ものすごく聞きづらいが、これだけは聞いておかなければならないことが、ひとつだけある。
「……あのさ、すっごい微妙な質問するんだけど」
おそるおそる切り出すのと、新しいメッセージが届くのは同時だった。
『一応言っとくけど、本丸での俺とじじぃはただの同僚だったからね。俺もじじぃも、色恋とは無縁な本丸生活送ってたよ』
「そっ……そっかぁ!」
妙に大きな声が出てしまった。
『安心した?』
「正直、すごく」
『素直だねー。ま、気のせいの可能性が全然高いし、あんま気にしないで。でも今度一緒のところ見かけたら声かけてみていい?』
「もちろん!」
過去恋人同士じゃなかったのなら、むしろ大歓迎だ。それがきっかけで色々と思い出してくれたら、ふたりの関係がさらに深まるかもしれない。
チャットを終了させ、清光はベッドに腰を下ろした。
「則宗のことを知ってる誰か、かぁ……」
少しだけ心が浮き立った清光だったが、次の瞬間致命的なことに思い至った。
「——待って」
まてまて。
則宗は、記憶の向こうにうっすらと見えた清光の面影に恋をしていたのだと言った。
センシティブな則清とか加則加とか
『こないだお前とカレシが一緒にいるとこ見かけたんだけどさ』
というメッセージが個別チャットに飛んできたとき、清光はちょうど明日の則宗とのデートに着て行く服を選んでいるところだった。
「見かけたんなら声かけてよ、あとから言われたらはずいじゃん」
『なんかいい感じだったしデート中に声かけるのも野暮だろ』
「そうかもだけどさ」
音声入力をオンにした清光は、テーブルの上に固定したタブレットの画面を覗き込みながら白いニットをベッドの上に放り出した。
『俺、あの則宗知ってるかも』
「えっ」
絶句してしまった。知ってるかも? あの則宗を?
それはつまり、
「お前の本丸のじじぃかもってこと?」
『話してみないとわかんないけど、なんか知ってる気がするんだよね。他の連中と会ったときは全然なかった引っかかりって言うか、妙に気になる感じがする』
それって俺の可愛い可愛い則宗に岡惚れしちゃったってことなんじゃないの?
と詰め寄りたいところだったが、清光はぐっとこらえた。
人間として生きていても、加州清光の同位体だった皆は故意に人を傷つけるようなことはしない。過去の絆をちらつかせて横取りしてやる、なんて考えがないのはわかりきっている。
則清♀の則宗♂がバグで則宗♀さんになっちゃって、しかもなんというかその、なかなかにダイナマイトボディの爆美女が誕生しちゃったものだから、大得意になってほうぼうに見せびらかしに行く。その度まなじり吊り上げた清ちゃんに首根っこ掴まれて引きずられていくんだけど、もちろん清ちゃんにもたくさんお見せしたい。
「ほーれほーれ、美女だぞ🌸どうだ、女の僕もなかなかにかわいいだろう」
「はいはい、そーね」
つれない清ちゃんにちょっとムッとした則宗さん、あろうことかその豊満なお胸を座った清ちゃんの肩にずし…と乗せて煽ってしまった。
「まったくつれないなー、これでどうだ?この身体全部、お前さんのものなんだぞ…🌸」
「…へー?💢ピキッ」
その晩一夜限りの加則が爆誕したことは言うまでもない。
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