ドラゴンカーセックスその後産卵話
則宗は七日後に目を覚まし、清光からことの顛末を聞いて大笑いした。
「そうかそうか、さすがは僕の卵だ! ありがとうよ、坊主」
七日も眠り込んでいたとは思えないほど、則宗は元気だった。産屋のとっちらかった布の上であぐらをかいているかれは、なんならたまわけ前より肌艶がいい。もしやデトックスみたいな効果があるんだろうかと清光は訝しんだ。
「いや、俺は何もしてないんだけど……」
礼など言われると申し訳ないくらい、本当に何もしなかったのだ。そう言うと則宗はゆったりかぶりを振った。
「いいや。お前さんがよくやってくれたから、孵るのも巣立つのも早かったのさ」
「そうなの……?」
「ああ、そうだとも」
自信たっぷりに断言されても信じる材料はない。が、否定する材料もまたなかった。
「まあ、あんたがそう言うならいいか」
「うんうん。それでいいんだよ」
なぜかご機嫌な則宗はそこでふと言葉を切って清光を見つめた。
「なあ、坊主」
淡い空色の眸に、蜜の甘さが宿る。清光は唇が触れるのを待った。
「また卵を作らないかい?」
「いいけど、また一週間もあんたが寝込んじゃうのはさみしい」
毛布やタオルケットやパジャマの中に埋もれながら清光が囁くと、則宗は両腕を首に巻きつけて微笑んだ。
「善処しよう」
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その瞬間、龍の光が強くなった。全身が震え、ぐっと全身が垂直に伸びる。
大きくなった、と清光認識した瞬間、生まれたばかりの龍は天井を突き抜け空へと駆け上がった。
後に残されたのは、ほのかな光の残像だけだ。
「な……なに……? 待って、待って待ってもう出ていくわけ⁉︎ 成長早すぎない⁉︎」
——たまわけをすると、と長義は清光に語って聞かせてくれた。
『生まれた卵は、だいだいこの人が目を覚ますのと同じ頃に孵る。世話はいらないよ、君がすべきことは産屋に他の者を立ち入らせないこと、新鮮な水を絶やさないことだけ。卵から孵ったらあとの世話はこの人がする。巣立ちの早さはまちまちだけど、さほど時間はかからないかな』
「さほど時間はかからないどころか、生まれた瞬間孵化して巣立ったんですけど……」
これって大丈夫なんだろうか。則宗が目を覚ましたらなんと説明しよう。卵がいなくなっていることにショックを受けたりはしないだろうか。
健やかな寝息を立てる則宗を見下ろし、清光は嘆息した。
本当に、則宗といると何もかもが想定外だ。
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泡を食う清光に、光の紐にしか見えない生まれたての龍がついと近づく。害意はないだろうと思っていても身体がこわばるのはどうしようもない。
硬直し、視線だけで自分の身体を確かめるように飛ぶ光を視線で追う。目を凝らすと、ぼんやりとしたシルエットがその中に見えた。
「龍だ……」
当たり前すぎる言葉が口をつく。
あの日見た則宗のミニチュアのような小さな龍が発光しながら浮遊しているのだとわかった。
恐怖と警戒が途端に自分の中から消え失せるのを、清光は自覚した。
何しろあの、自分にベタ惚れの則宗が産んだ卵から出てきた存在である。そして清光だって、則宗に心底メロメロなのだ。
「……さわっていい? いや?」
言葉は通じるだろうかと思いながらそっと指先を光の方へのばす。小さな龍は飛び回るのをやめ、清光の指先をじっと見つめているようだった。
「あんたを産んだのはここに寝てる龍だけど、産ませたのは……たぶん俺なんだよ」
内緒事のように告げてみる。龍は左右に頭を揺らしてから、そっと口吻のあたりで清光の指先にふれた。
好きな男士あげるターン?
則宗、小豆、大包平です
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鶏卵が出てくると想像していたわけではないが、もっと実態のある何かが出てくるとばかり思っていた清光は面食らった。これじゃ卵と言うより光るボールだ。
しばし呆然としていた清光は、しかしすぐに我に返った。則宗を見やると、長義から聞いていたとおりぐったりと目を閉じてしまっている。このまま十日ほど目を覚さないはずだ。ならば卵の世話は自分がしなければ。
決然と顔を上げ、清光は卵をもう一度視界におさめ、そしてぽかんと口を開けた。
卵はすでに卵ではなくなっていた。宙に浮いていた光の玉は、ちょうど小さな蛇くらいのサイズの細長い光の紐のようになってあたりを泳ぎ回っている。
「もう孵ったの……?」
卵がどのタイミングで孵るのかははっきりとはわからないと長義は言っていた。しかしこんなあっという間に孵ることがあるとも言っていなかった。「おそらくこの人がが目を覚ますくらいのタイミングで卵は孵るんじゃないかな」、そう言われていたのだ。清光はうろたえた。
なぜなら、卵から孵った後の世話は則宗が見ることになっていたのである。
「嘘でしょ、えっ、何なに、どーすんの⁉︎ エサとか世話とか!」
あずちょも〜
ブルスカに投げてしまった
習い事の先生に「アトちゃんは余白が怖いのね…」てズバリ言われて笑った
そのとおりでございます…
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「んぅう……あ、ううっ……」
しかし声もしぐさも悩ましい。金の枝角に絡む波打つ髪に色香を感じてしまう日が来るなんて、出会ったあの日には想像すらしなかったのに。
「がんばって」
清光は声を励ました。
「大丈夫、俺がついてるから。あとちょっとだよ」
あとちょっとかは実は知らない。長義が教えてくれたことの中に、実際のたまわけがどう進行するのかは入っていなかった。「龍によって違うから、俺の経験は話せてもあなたのたまわけがどうなるかは言えないかな」とのことで、教わったのは主にたまわけの後のことだったのだ。
「あとちょっとなのか? そうか、よし」
なぜか本人がど素人の人間である清光の言葉に納得してしまっている。
「そうだよ、なんかほら、光も強くなってきてるし!」
「うん、んんっ、うう〜!」
則宗はとうとうジェラピケを手放し清光の腹に触れていない方の手を両手で掴みしめた。ぎりぎりと万力のように締め付けられて出そうになった悲鳴を、どうにか噛み殺す。
「う、生まれる……!」
則宗がうめくと同時に、腹に当てていた手がじわりと熱くなった。
次の瞬間、則宗の下腹あたりから淡い桃色に光る玉のようなものが漂い出た。
「こ……これが卵……?」
BL GL大好き。ReSoner。
現在作品はxfolioに再録作業中です。
パスワードは「yes」です。