ドラゴンカーセックスその後産卵話
美しい客はなんと則宗とふたり産屋にいた。
なんでよりによってここなのと思いながら水とどら焼きを出すと、意外なことに男はわずかに頬を緩めた。冷ややかにすら映る美貌が、そうすると一気に優しげに和らぐ。
「ありがとう、いただくよ」
則宗が春の暁なら、この客は冬の早朝だ。清々しくなんの濁りもない水のようでもある。
「こちらが、あなたの?」
山姥切と名乗った男は清光から視線を移して則宗に問うた。
「ああ、そうだ。愛らしいだろう? 僕の坊主は。可愛いだけじゃないぞ、賢くて優しくてかっこよく」
「俺は山姥切長義。長義と呼んでいい」
まだまだ続きそうな則宗の言葉を容赦なく遮り、長義は清光に水を向ける。あわてて膝をそろえ、清光は頭を下げた。
「か、加州清光、……です」
自分とさほど年齢の変わらないように見える相手に敬語になったのは、長義が人間よりはるかに長寿の龍らしいから、というだけではない。
何となく、学校の先生を思い出させる謹厳さがかれにはあった。背筋を伸ばしていなければぴしゃりとそれを指摘されそうな、そんな気がしたのである。
ちぢこまる清光に則宗はのんびりと胡座で笑う。
「そんな畏まらなくたっていいぞ清光。号は山姥切だが別に取って食おうってわけじゃないからな」
スプレッドシートで作品を整理して再録本に向けてのあれこれをしようと思い立ちました(思い立っただけ)
耳が出た瞬間今までうっすら好き〜くらいだった大典太が先頭集団に躍り出てしまった
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返事を置いて則宗は濡れ縁をずるペたと歩いていく。枝角も、尻から伸びた立派な尾もそのままだ。角を折れるのを見送ってから、清光は則宗いわくの産屋を覗き込んだ。
部屋の広さは四畳半だ。ここいらの畳は清光が住んでいた関東のそれよりも大きいし、濡れ縁と繋がっていることもあって広々として見える。ただし、今その畳の上には所狭しと古着やタオルが敷きのべられている。巣材にされているのは清光が着なくなった服や使わなくなった布類がメインで、いらなくなった雑誌や本、使い終えたメイク用品の空き容器まである。
まさかここに客は入れまいと思いながら清光は引き返して台所へ向かい、来客用のグラスふたつに水道水を注いでコースターと一緒に盆にのせた。
茶請けを出すべきか迷ってから、昨日おすそ分けでもらったどら焼きをふたつ水屋から取り出す。則宗以外の龍がどら焼きを食べるのかはわからないが、嫌いなら手をつけないだろう。龍の礼儀作法は知らないが、客に菓子も出さないのかと言われるよりはましなはずだ。
「おおい坊主、こっちへ来ておくれ」
タイミングよく呼ばう声があがった。
「今いくー」
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ほどなく、「ここだ」という声が奥の茶室から聞こえてきた。
茶室と言ってもむろん独立した建屋などではない。南側を向いた小さな書院ふうの部屋に炉が切ってあるのだ。
ほどよい狭さと日当たりのよさが気に入ったらしく、則宗はこの家に入った途端「ここを産屋にする」と宣言し、以降清光には意味がよくわからないものをせっせとその部屋に運び込んでいる。
濡れ縁の向こうに、障子戸から顔をのぞかせた則宗の頭が見えた。今日はよほどリラックスしているのか、頭には金の枝角が輝いている。
「巣作り?精が出るね」
「いよいよ日が近いからな、追い込みってやつさ」
日が近いと言われ、清光は「楽しみだね」と頷いた。則宗の「近いうち」が全然近くないことはもうわかっている。龍の時間感覚は人間とはまるでスケールが違うのだ。
「忙しいところ悪いんだけどあんたにお客さんが来てるよ。やまんば……ぎり、さんだって。玄関の前で待ってもらってるんだけど、通していい?」
「山姥切?おお、もう来たのか、早いな。いや、僕が出るから水を頼めるかい」
「あんたのと同じでいいの?」
「ああ」
BL GL大好き。ReSoner。
現在作品はxfolioに再録作業中です。
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