【ひろ公】ペンダント居住区の噂話 的な【小話】
(昨日TL眺めててぽっと出たやつ。続くかなぁ)
ペンダント居住区には、ずっと昔から「主無き部屋」がひとつある。利便性の良い手前の集合住宅よりも少しだけ奥、独立した棟になっている上等な一室だ。
こんな好条件の部屋が空いているのには理由がある。その昔このクリスタリウムの街を作ったという張本人、水晶公のきっての願いだったからだ。曰く、『いつか訪れるであろう大切な客人の為に、なるべく快適かつゆっくりと静かに過ごして貰える一室を用意しておいて欲しい』と。
何においても民を優先し、己の希望を滅多に口にしない敬愛すべき指導者の稀有な願いは当然皆を二つ返事で頷かせ、以来その部屋は代々ペンダント居住区の管理人に引き継がれ、守られている。
しかしながら数十年に渡って空室のままの部屋だ。長命のヴィース属ならともかく、親子数代にわたって待ち人が現れぬその部屋は、いつしか住民達のささやかな好奇の的にもなっていた。
「ねぇねぇ知ってる?ペンダント居住区にある、誰も住まない部屋の話」
「当たり前だろ。水晶公の大事な客人の為に押さえてあるって言う」
「手入れはしてても、何十年もずっと空き部屋のままなんでしょう?おばあちゃんの頃からあるって話だわ」
「どんな人を待ってるんだろうね」