水盆に割れた貝のかけらを敷き詰める。砕けた金銀の砂子を指先に飾る。
行き止まりの部屋の行き止まりの窓辺に身を寄せ合って、ふたりのこどもはほほ笑みを交わした。
「もうすぐかな」
「もうすぐだよ」
水鏡の内側では回転する銀河が時を数えている。たなびく尾の先は冷えゆく巨人の心臓の在処を示して、その時がまもなく訪れることを知らせていた。
ひと連なりの海、ひと連なりの空、光の波音が忍び寄る。まつりの最後の晩を越えて、こよいの先へと星たちは渡る。
迷わぬように、恐れぬように、ふたりのこどもは手を取り合って、月影が窓のかたちに落ちる真夜中を待っていた。行き止まりの扉が開かれるその時を待っていた。
#創作 #小説