ねぐらの玄関先にセミが転がっていた。
Twitterで得た知識から、完全に息絶えていることが一目で分かった。
長い年月をかけて地上に出た子。頑張って生きたね。
でもそこはアスファルトやコンクリートしかない場所。亡骸に待っているのは踏んづけられて粉々になる未来だろう。
それはいくらなんでも悲しすぎる。
私は園芸用トングで彼をつまんで自宅庭へ運んだ。
折よく別の羽虫を解体中のアリンコさんたちを見つけたので、亡骸をそばに置いてみる。働き者の彼らは突然現れた新しい支援物資にすぐに気がついた。
残業ってことになるのかな、などと思いつつも眺める。
これで繋がる命もある。巡り巡って自宅庭の土壌も豊かになるはずだ。
ずっと眺めていたいところだったが、蚊が私を狙っている。庭木に止まるアブラゼミも私の動向を気にしているし、さらにはまだまだ暑くて敵わなかった。
本来の用事である庭への水まきを済ませて退散した。
明日の危険な暑さの時間までには、セミの解体も終わっているだろう。
彼の命が、別の命の助けとなりますように。