昔むかし、誰にだったか、「人と人を罪悪感がつないでいる」と言ったことがある。名前も知らない関係なら善行を施そうが悪行を為そうがそのまま通り過ぎるところを、関係を継続するうちにそういう貸借表は積もり積もって列をなし、気づけば身動きもできなくなるまで両人を心理的に縛り付けるのだ、と。
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その時に相手がなんと言っていたかは覚えていない。単に病的な発想だと思われたかもしれないし、あるいは私が意味したところを部分的に/完全に取り違えてあまり気にしていなかったかもしれない。ただ、今思い返してみると、「もしかしたらその時の話相手は、そもそも他者との関係にそういう観点を持ち込むことがほとんど/まったくなかったのではないか？」という可能性に思い当たる。
ただ、客観的に観て特異/病的であろうとそうでなかろうと、この認識自体は今も私の中で人間関係の根本として根付いている。人と人は罪悪感で結びつき、そこから逃れること能わず、かくして逃れられない人々がとにもかくにも世の中を回し続けているのだ……と。