架空の酒飲み
疲れて、酒を呑み、「今座ったら、しばらく立ち上がれないだろうな」と考えながら……彼は手頃な斜面、川のそばの草の生えた斜面に横たわった。案の定立ち上がる力もその意思も湧かず、彼はただ、身動きをしない範囲で現在センサーで感知できる情報について分析をはじめた……もちろん、アルコールの作用で処理性能は落ちているが。幸いにして即座に対処すべき脅威は今の彼には認識できず、さらに幸いなことに脅威はその間実際に存在せず、かれはしばらくの間、十分に時間をかけて、見えるもの聞こえるもの触れるものについて考えをめぐらせていた……
架空の酒飲み
……残念なことに彼の各種センサーおよびその入力を処理して認識する能力はアルコールの作用で大幅に機能が低下しており、彼にはいくつか上方で輝く光、おそらくは十分に安全な遠方で動き回る高速移動物体、そして身体の下で自分の身体によって潰れている青い草の匂いと感触しか感じ取れなかった。かれはそれらが意味すること、自らの脅威になる可能性についてなんとか考えようとして……やがて諦めた。かれは考えた、それらはかれにとって意味があろうがなかろうがそこに在り、そしてもうしばらくは在り続けるだろう。それらはかれが何をしようとするまいと、やりたいことをやろうとするだろう。それでいいではないか……彼はそのまましばらく動かず、そして十分に休んでから、彼自身が望むことをなすために、ゆっくりと起き上がった。もう少し、安全な場所で休むために。