【再042】
「あんたはさ、巣もしっかり作らないし、栄養のある食べ物も食べてないようだし。水浴びはともかく、砂浴びもサボっているんでしょう。気に入ったメスとかいないの? あんたぐらいのいい体格をした若いオスが、もったいない。ちゃんとしなさいよ。群れのボスだって狙えるのよ。ボスになれば好きな枝を選び放題だし、食べ物をたくさん食べていいんだし、一級の美鳩に卵を産ませることができるし、そしたら強い鳩が増えるわけだから、やった方がいいとかいうレベルの話じゃなくて『やるべき』だと、私は思うわけよ、やらないのは怠け。怠惰。もっと一所懸命生きてみたらどうなの?」
僕は黙って聞いていた、今までに何回同じことを、いろんな人からいわれたんだろうか。全部じゃなくても大体同じようなことを言われる。「選ばない」「ちゃんとしていない」「怠けている」
僕はそういったことよりも、きれいな花を探しに行ったり、眺めのいい場所で歌を歌ったり、ほかの動物の生き方を知ったりすることを選んでるんだ。比べてみれば、たぶん同じぐらいのことを選んでいるのに、僕の選んだものはあの鳩たちに見えていないんだろうな。