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「あっちぃなぁ〜」
そう、独りごちながら小さな庭にぽつんと立つ。
八月、季節は夏。
ジリジリと照りつける陽光と、ジメジメとした海辺の気候が、外に居る体力をジリジリと削っていく。
「それでしたら、中に入ってお寛ぎになられればよろしいですのに」
「否、それはダメだ
人間だって、君たち以外には殆ど入れねぇんだ
オレが入っちゃあ、世話ねぇぜ」
「全く、強情ですねぇ」
お好きにお寛ぎくださいませ、と苦笑しながら妙齢の女性が、一人庭に立つ土地護に声をかける。
おう、と一言小さく返しながら、土地は空を見上げる。
ハッキリとした蒼が、目に飛び込んでくる。
如何にも夏らしい、生き生きとした爽やかな蒼。
「…くっそあっちぃし最悪の時期だが、空を見るとなんだか許せちまう気がするんだよなぁ」
湿度の高い空気とは対照的に、カラッとしていて明るい空。
見ているだけで、何と無く晴れやかになる。
そういえば、あいつの亡くなった日もこんな暑さの日だったか。
そんな事を思っていると、一陣の爽やかな風が、ぼうとしていた土地の頬を撫でながら通り過ぎた。
ああ、これは確かにとても。
「「涼しい風だ/だね」」
そう呟いた声は、何時の間にか後ろに居た、青年の淡々とした声と重なった。

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