なんであの話の舞台が運送業なのかといえば(作者が運送業の世界にまったく詳しくないのは残念ながら明らか)、たとえば他の肉体労働(土木作業員とか工場労働とか)だと危険に晒されるのは労働者自身の身体だからであって、要するに他者への潜在的加害性の象徴としてトラック運転手を選んでるわけでしょ。それを職業差別でないと言い切るのは難しいし、何より「空気を読んで気遣いをするのではなく、相手を直接見て"ケア"するのが大切ではないですか?」というテーマの作品なのに、作品自体が現実の他者をまったく無視して自分の世界に閉じこもっているのはやはり説得力を欠いてしまう。