――日本では育児や介護関係の職種は賃金も低く、市場としても十分に育っていません。
「北欧では専門職や管理職など高度なキャリアを持つ女性が非常に高いサービスの品質基準を要求し、公的な保育全体のレベルを高めてきた。例えば私が現在住むスペインの保育所では1人の保育士が3〜6歳の子ども25人の面倒を見るが、デンマークでは保育士1人に子どもは最大でも7人だ」
「(保育士の人件費も含めて)これだけぜいたくなサービス給付には相応の財源が必要になる。北欧の場合、公的な給付やサービスが良質だから高い税金を払うという社会的同意がある。税率が高くても自分たちがそこから利益を得ていて、それなしには生きていけないから福祉国家を正当なものと北欧の人々は考えている」
――質の高い育児サービスは子どもに対しても好影響がありそうです。
「少ない保育士が多くの子どもをケアしようとすると、認知能力や精神面で未発達な子どもがどんどん後れをとってしまう。しかし少人数をケアする体制ならそうした子どもたちに特別な注意を払うことができ、全体として認知能力の向上が見込める。幼少期に認知能力を高めることは将来にわたって非常に良い影響をもたらす」