男女平等が経済刺激 エスピン=アンデルセン教授

長い停滞にあえぐ日本経済が再び成長軌道を取り戻すために北欧から得られるヒントは何か。福祉国家を長年研究してきた政治社会学者イエスタ・エスピン=アンデルセン氏は、男女平等で生まれる新たな需要が経済を刺激すると話す。

nikkei.com/article/DGXZQOCA112

――北欧の安定成長に比べ、日本経済の低迷は深刻です。

「日本はこの30〜40年間、非常に停滞した状態が続いている。経済のダイナミズムを取り戻したいのであれば女性の社会的な役割の変革を推し進めることが一つの突破口になるだろう。労働市場における収入やキャリア、家庭内での地位などで男性と平等にするための政策的支援が不可欠だ」

「女性が男性と同じキャリアを歩むようになれば家族のあり方が変わる。家庭内で女性が担ってきた育児や高齢者介護、家事を外部化すれば、代行するための新たな需要が生まれて経済を刺激する。北欧では1970〜90年代に男女平等が進み、同時に経済のダイナミズムがもたらされた。性的な役割を見直すことで家族や社会・経済のあり方を大きく変える『革命』を起こそうと日本の女性も立ち上がった。多くの抵抗があるだろうが、長期的に不可欠な流れだ」

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――日本では育児や介護関係の職種は賃金も低く、市場としても十分に育っていません。

「北欧では専門職や管理職など高度なキャリアを持つ女性が非常に高いサービスの品質基準を要求し、公的な保育全体のレベルを高めてきた。例えば私が現在住むスペインの保育所では1人の保育士が3〜6歳の子ども25人の面倒を見るが、デンマークでは保育士1人に子どもは最大でも7人だ」

「(保育士の人件費も含めて)これだけぜいたくなサービス給付には相応の財源が必要になる。北欧の場合、公的な給付やサービスが良質だから高い税金を払うという社会的同意がある。税率が高くても自分たちがそこから利益を得ていて、それなしには生きていけないから福祉国家を正当なものと北欧の人々は考えている」

――質の高い育児サービスは子どもに対しても好影響がありそうです。

「少ない保育士が多くの子どもをケアしようとすると、認知能力や精神面で未発達な子どもがどんどん後れをとってしまう。しかし少人数をケアする体制ならそうした子どもたちに特別な注意を払うことができ、全体として認知能力の向上が見込める。幼少期に認知能力を高めることは将来にわたって非常に良い影響をもたらす」

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