光ラハの少しふしぎな話2 その2
なるほど、猫は魚好きとは本当だったか。あまりにも大きな声で鳴くものだから予定のなかった魚を急かされるままに買う羽目になった。
店を出た後あまりにも催促されるので買ったばかりの小魚を与えるとそれはもう嬉しそうに平らげていく。
あげた魚が全て猫のお腹に納まる。これで満足しただろう。じゃあな、と立ち去ろうとすれば猫はぴょんとジャンプして肩に飛び乗ってきた。
なんとまぁ懐かれたものだ。魚がそれほど美味かったらしい。俺の肩の上で上機嫌に尻尾を降る猫をお供にそのまま買い物を続けていく。
さて無事買うものは買えた。猫をおともに家路へと急ぐ。そろそろラハが起きてしまう。
ところでこの赤毛の猫をどうしよう。こんなに人馴れしているのだ、どこかの飼い猫なのだろう。だが一緒に買い物をするうちにすっかり別れ辛くなってしまった。
「なぁ、お前さえよければうちに……」
そう言いかけたところで猫がいなくなっていることに気付く。辺りを見渡しても姿はどこにも見当たらない。その気まぐれさが実に猫らしかった。
一人で帰り着いた家ではラハはすでに起きていて大きな欠伸をしながら俺を出迎えてくれた。
光ラハの少しふしぎな話2 その3
「なんかさぁ変な夢見たんだ。オレが猫になる夢」
「ふぅん? ミコッテは猫だっていうしなぁ」
「ミコッテは猫じゃねぇし! それが猫になってあんたと買い物する夢だった」
オレ、猫になってもあんたと一緒なんだな。そういってラハは笑う。それから俺が買ってきた品物を受け取り中を覗きこんだ。
「今晩、魚料理か? やった! なんか今日は魚の気分だったんだ。ありがとな」
ご機嫌にぴこぴこ尻尾を動かして喜んでいる。本当はがっつり肉料理のつもりだったなんて言えやしない。そこでふと思い当たる。猫が興味を示した食材はどれもラハが好きなものばかりだ。
そういえばあの猫の目は何色だったのだろう。あれだけ近くにいたはずなのに、赤毛の猫の瞳の色はさっぱり思い出せなかった。